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2019.06.05 up
古着×古着 アップサイクルブランド【MEND】の成り立ち
リメイクやアップサイクルのコーナーには、わたしたちヒューマンフォーラムから生まれたアップサイクルブランド【MEND】と、循環することをテーマにしたリース作家のTaphy(タフィ)さんのリース作品があります。
丁度1年前、わたしたちはお洋服の廃棄の活用方法について考え始め、Taphyさんとのご縁が生まれ、同時に様々な気づきが広がっていきました。
例えばTaphyさんからは循環すること、今あるものに価値を見出すこと。
世界のファッション業界の動向から江戸時代の裂織の使い切るという文化などそれは様々です。
そんな中で、私たちが始めた活用方法は、エネルギーや途上国支援でもなく、古着が大好きな私たちだからできる裂織りでのアップサイクルであり、そこには私たちらしい”バラバラが交わることのおもしろさ”がありました。
MENDの成り立ちとともに、今考えていることをご紹介します。
わたしたちらしい、やり方は?
私たちヒューマンフォーラムはSPINNS、mumokuteki、GALLERIEなどのブランドを展開するアパレル企業です。サスティナブル(持続可能な社会)への世界的な潮流の中で、アパレル業界はお洋服の大量廃棄の問題があります。その量はなんと年間30億着/100t。わたしたちも業界の中では少ない方ですが、全体の約1%の捨てないといけないお洋服があります。
店頭での努力や様々な工夫の末、それでも捨てないといけないお洋服の自分たちらしい解決方法を導いていくため、7月かプロジェクトのチームがうまれました。
同じ業界の取引先の方々とアパレル業界のサスティナブルの勉強会では、様々な事例を調べながら意見を交わしていきました。
その中での気づきは、アップサイクルは解決の一部分でしかなく、アパレル業界の持続可能性を本質的に捉えるならば、環境負荷のかからない素材の製造から製造や流通、廃棄といった多様な側面で捉え方も必要だということです。
廃棄されるお洋服の利活用についても、エネルギーや新しいファブリックにする方法など、様々な取り組みが世界には広がっていて、とても抱えきれないほどの視野が広がっていってしまいました。
* アパレル業界のサスティナブルの勉強会。お取引先のfor itさんと
また洋服の利活事例を調べた時に、日本の”裂織り”を知る機会がありました。
裂織りは、使われなくなった洋服を、裂いて、また編み込むという、江戸時代から日本に続く生活の習慣です。昔の日本にあった綿や麻の衣料品は、原材料、生地、お洋服の製造の全ての工程が手作業でありそのため当然高価なものでした。
使い古して穴が空いたらパッチワークや切り貼りして着る。着古せば雑巾に。最後には畑で燃やして肥料にする。「使い切るという文化」がそこにはありました。
かたちや用途を進化させながら使い切るかっこよさと、圧倒的な存在感のあるアイテムに興奮しました。
明治初期から大正時代の手織り木綿の布地を使った”ぼろ” 出典 tenstudio
在るものを組み合わせ、新しいモノをつくること
同じ時期に、Taphyさんとの出会いにも気づきがありました。
リース作家のTaphyさんがつくられるものは、季節の草花や身近な山野草、畑でとれたハーブをつかったもの。京都美山、京北で、循環していくことをテーマに自然から採集したファーム&クラフツのプロダクトを展開されています。
元々、市内でシェアハウスに住まれ、結婚して子供ができてから住む場所を田舎で探しされました。不動産屋を介してではなく、「この大家さんがこの人だからという理由で住む場所を決めたいね」という夫婦での対話があり、京都市の山間地域、京北町でご縁が生まれ、移住することになったそう。
リースという表現に変わったきっかけも、京北での生活にありました。
元々絵を描いていたTaphyさんは、絵の具とキャンパスを買って絵を描くという、始まりを消費にしたつくることへ意味を見出せず、「生活やサイクルの一部」を感じることができる創作活動をしたいと思われていました。
そんな価値観を求める中、京北での生活がスタート。そこは、まさに自然環境や暮らしが循環しているものでした。ある日、散歩の途中に、道端に咲いていたお花を摘んで、輪をつくりたいと思ってつくったのが、最初のリース作品です。
ドライフラワーに関心をもっていた会長にプレゼントしてくれたことから、ご縁はスタートします。
Taphyさんに、京北で素材収集をされている合間にお時間をいただき、普段どんな考え方で制作をされているのかをお聞きしました。
“リース制作は今の生活スタイルにとてもあっているけど、植物だけにはこだわっていない。循環することであれば、ガラクタをモチーフにしてもいいそういう可能性をクリエイティブしていきたいという、気持ちになっています。
今はモノがいくらでも世の中にある。出まくっちゃっている
新しいものが出てきているけど、出尽くしている部分もある
もしかしたら、私たちは時代の変わり目に生きているかもしれなくて、
大事なのはこの時代に生きて、それぞれが何をするかということ
最終目標は、みんなが生産する世界。
今は、生産する人が分けられている世界だと思っていて、それぞれが少しづつ生産をして、分かち合えるような世界を目標に置いています(笑)”
そんなお話をされながらもTaphyさんの手には、いつのまにか作り始めた、小さいリース作品が出来上がっていました。
そこから、京北のマルシェイベント「ツクル森」に、一緒に出店することご相談し、裂織りのアップサイクルブランドと共にPOP UPブースを作ることになりました。
バラバラが交わると、こんなにもすばらしい
裂織りのアップサイクルブランドを考え始めてから、様々な課題がありました。
店頭に並ばなくなったお洋服は、素材も色も形状もバラバラです。裂織りにするには、まず色や素材の仕分けを行い、裂いて糸玉をつくり、デザインを想定し選定。糸玉を織り機で折って、製品に仕上げていくといった工程があります。
今後続けていくためにも、それぞれの工程のデザインが必要でした。
まずは自分たちでやってみようと、ツクル森出店ブースに必要なアイテムを考え、Taphyさんにもリース作品をつくっていただき、準備期間2ヶ月で出店を進めました。
今回は、同じ色で織ったファッション雑貨や、デニムのリペアアイテム。誰でも織ることができる織り機として木枠自体もインテリアアイテムとして展示し、随所に世界観のあるTaphyさんのリース作品も展示しました。
裂織りは商品アイテム数が限られるため、販売よりもマーケット調査をメインにしました。
加えて、「どうせなら商品をつくる工程に、京北の方々もご一緒いただけないだろうか?」そういった意見から、同時にこのようなお仕事を一緒にしてくださる方を探そうということになり、京北全体への視点がうまれ、偶然のような広がりがうまれていきました。
当日は、来られた方に
1.集める
2.糸玉をつくる
3.編む
という工程をご説明し、実際に編んでもらったりしながら、一緒にしたい人を探している、という投げかけをしていきました。
「楽しい、ずっと編んでいたい」「こんなアイテムがあったらいいね」
といった意見ももらえたほか、一緒に関わることに興味をもってくださった方、家にあった着物の残反をお持ちくださった方もおられました。
Taphyさんの作品は存在感があり、リースについて聞いてご質問をたくさんいただき、先日の台風災害に落ちていた木々や植物で作られていることをご説明すると、とても興味深い反応をいただけました。
あるお母さんが京北のエピソードを教えてくれました。
「昔、京北に西陣織の工場がたくさんあって、京北のおかあさんが着物などの衣料品を作っていたんです。うちの実家も昔その工場でした」
ファッションの土地の記憶があったことにメンバー同士でとても嬉しく思いました。
アップサイクルブランドを京北での生産の視点をもちながら臨んだ結果、森で販売しているMENDのいくつかのアイテムは、京北町の福祉作業所しゃくなげさんの利用者さんや当日出会えたお母さん2名が関わってくださっているものです。
MENDのこれから
素材も色も違ったモノを、多様な人が関わりながら交わって新しい価値がうまれていく、このおもしろさ。「ばらばらが交わるとこんなにもすばらしい」という言葉は、生まれ育った環境や個性や特性が多様な、わたしたちヒューマンフォーラム自体でもあるように思います。
「MEND=繕う」をブランド名に、長く工夫しながら使い続けるという選択肢を自分たちでとらえ直しながら、たくさんの人と育んでいきたいと思っています。
森のRE;CIRCLE STUDIOは、そのコミュニティの拠点の一つにしていきたいと思っています。
まだまだ、このブランドは、捨ててしまうお洋服の量を全てカバーできるものではありません。
社内外の方多々と多様な展開が作れないか考えていきたいと考えています。
ご興味のある方は是非森で、この取り組みをご一緒させていただきたいです。
MEND
SPINNS、mumokuteki、GALLERIEなどを展開する株式会社ヒューマンフォーラムのアップサイクルブランド。
自社だけでなく異なる業種、業態と一緒にMEND(=繕う)を通じて、愛着があって永く着れる生活を提案。ダメージの大きい古着のリメイク、洋服を裂いた新しいファブリックや生活用品など、ファッションを使い続ける新しい提案をしています。
Taphy | Takae Yamaguchi
リース作家・画家。2016年より京都市京北へ移住。
ゆたかな大自然のもと、季節の草花や身近な山野草、畑でとれたハーブをつかってリースを制作している。