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2019.03.27 up
イベントレポート | これからの時代のファッション座談会(仮)
3月17日(日)に【森】特設会場にて90年台からファッション業界に携わり時代を作ってきた5人のメンバーで「これからの時代のファッション」という議題で、それぞれが考える過去~未来へのファッションについて座談会が行われました。
■イントロダクション~自己紹介
まずは今回司会を務める「森」クリエイティブディレクターの井垣より挨拶と今回新規オープンした「森」の紹介からスタートし、それぞれの自己紹介へ
■SPEAKER
ALL YOURS 代表取締役
木村昌史
ストリート編集室
青木正一
COMEPASS事業部 カジカジ編集長
高松直
ヒューマンフォーラム代表取締役社長
岩崎仁志
MEND プロデューサー/森 クリエイティブディレクター
井垣敦資
自己紹介の中で岩崎さんから
「ファッション業界、雑誌業界の不況の中、僕たちはいろんなことを考えざる負えない状況になってきている」
という言葉が印象的です。
長年カルチャーを牽引してきたメンバーから今の時代がどう写っているのか?そんなことが聞けるというワクワクする気持ちがでてきました。
■流行、ファッションとはなんなのか?
井垣さんが司会を進行し、スタート。
まずは「流行、ファッションとはなんなのか?」という質問でそれぞれの感じる「ファッション」について語っていただきました。
木村
ここ数年で「ファション」が拡張したと思います。特にSNSというツールが出てきて大きく変化したと感じます。
昔はファッション(服)というのは自己のキャラクターを主張するツールで、自己承認欲求のツールでした。でも今の時代SNSの普及で、自己を主張するツールが「食べ物」や「ゲーム」にまで広がって、ファッションの意味合いも広がっています。
あと、「グランジ」「HIP HOP」以降はファッションと音楽の関連性がなくなったというのもすごく感じます。
青木
2年前くらいからファッションが変わってきたと感じます。
ファストファッションが台頭して、ファッションというものが終わりそうな感じだったのですが、
VETEMENTSやOff- White というブランドが出てきて流れが変わってきたと感じます。
ストリートから発生しているブランドですが、ベースは「裏原」ストリートがあるので「原宿」にも頑張って欲しいですね。
高松
ストリートという意味だと、カジカジは大阪のストリートを撮り続けている雑誌なのですが、ここ数年でやはり大きく変化を感じます。
ファストファッションが牛耳っているときは、街に出ても人が面白くなかったですね。
でも、今はだんだんと街のファッションが面白くなってきていますね。
今また古着が流行っているのもノームコアからのカウンターの流れだと感じますね。
あと面白いのは、アメ村が特に元気だったのは94年前後なのですが、その時に街に来ていた人の子供たちが今ティーンとして街にきているので、そういう流れみたいなものもあるのかな?と思います。
それぞれのファッション感、ファッションの流れを感じていることを話していただき、すごく参考になりました。みなさんが感じている流れも時代をよく見ていて、「なるほど!」と納得する流行の読み解きをされています。
ここで「古着」というキーワードがでてきたので井垣さんから「古着の再燃についてどう感じていますか?」という質問が出たのですが、岩崎さんが「今話したいこと出たので、流れ関係ないけど喋っていいですか?」と自由な話し方の方向に(笑)
■ファストファッション以降の価値観の変化
岩崎
ここ数年で、皆さんも知っている原宿のファストファッションのお店が閉店しているのですが、それは「閉店」というよりも「お役目を終えた」という意味合いだと感じています。
ファストファッションがアパレルにもたらした影響が浸透したからお役目を終えたわけで、それは「服」というファッションを「愛着」から「消費」に変えたことだと思います。
ファストファッションが「服をイージーに買って、イージーに手放す」という流れを作り、ファッションを「消費」するものに変えたのだと思っています。
良くも悪くもその流れの中で僕たちは商売をしていたのですが、僕たち売る側も、今後は売る側としてどうしなければならないのか?ということを考える時期にきていると感じます。
みなさんはどう思いますか?
木村
僕は「消費=投票」だと思っていて、何に時間とお金を使うか?ということを表現するのが消費だと思います。
今ALL YOURSはクラウドファンディングで「共犯者」を集めていると言っているのですが、お客さんから【「共感」して買っていただいている】というよりは「支持」していただいているという感覚ですね。
それと売るだけでなく、リペアなどして買った後まで関わっていきたいですね!
井垣
僕は今「MEND」というブランドをやっているのですがMENDの意味にも込められているように「繕う(つくろう)」ことで長く愛着をもって服を着てもらいたいと思っています。破れたら繕って、汚れたら染め直す。そんなことがかっこよくなって欲しいですね。どう洋服と関わるか?ということを考えたいです。
今年はうちの農場でコットンとリネンを育てて、原材料から関わっていきたいと思っています。
僕たちは「販売」という面での意見ですが、「クリエーション」という面でもファションとの関わり方は変わってきているのですか?
青木
今ファストファッションの裏側として、発展途上国での安い労働力での生産や、環境への悪影響などが問題視されていますよね。今後流れとして「安い服は罪」という認識の時代がきてエシカルなファッションがくると感じています。
岩崎
僕も25年間ずっと洋服を売り込んで買ってもらうという「洋服の入り口」で必死になっていたのですが、これからはリペアやリメイクで買ってもらった後の「洋服の出口」を考える洋服屋をしていきたいと思っています。
みなさん、洋服への愛着、今後のあり方に対してかなり熱い想いとビジョンを持っていらっしゃいます。聞いていて今までの自分の洋服への意識と価値観がかわる内容で、お客さんも聞き入っていました。
ここで話がまた変わり、皆さんの「趣味×ファッション」のトークになっていきます
■趣味×ファッション
岩崎
先程みんなで打ち合わせをしているときに高松さんが「麻婆豆腐」がかなり好きだ!という話がでたのですが、ここをちょっと深掘りしたいと思っています(笑)
というのも、僕も銭湯やアウトドアが好きなのですが、それをファッションとして落とし込みたいって気持ちないですか??
高松
ありますね、麻婆豆腐好きの知り合い周りで「#MBDF」ってTシャツをつくったりして(笑)そんなファッションのありかたもアリだと思っています。
井垣
僕はスパイスカレーが好きなんですが、好きなカレー屋さんのカレーで染めたTシャツがあれば絶対売れると思っています(笑)
木村
そのくらい自分が好きなものに紐付いていたら好きになるとおもいます。
実際好きなコーヒーロースターの廃棄の豆で染めた「コーヒー染めのTシャツ」を販売していました。服はスラング的な表現もあって、分かる人にしか分からないけど、かぶったら嬉しいっていうのもありますよね。この人わかってるなーっていう、、、
井垣
90sのガングロギャルはトライブ(部族)的な要素があって、それに近いですよね。麻婆豆腐のトライブです!
木村
人はマイノリティーになりたがる傾向がありますよね。麻婆豆腐やお風呂のマイノリティーです。
話はファッションとは全然違う方向になるかと思いきや、一見ファッションとは関係なさそうな趣味もファッションに落とし込もうとする皆さんのファッション好きに驚愕です!
ここからはお客さんとの質疑応答になっていきます。
■質疑応答
お客さん
【森】のコンセプトは何なのでしょうか?どういう意図でこの【森】を作ったのでしょうか?
井垣
そうですね、お店全体に関しては、【森】全体をディレクションしている弊社の会長の出路に話してもらうのがいいと思うので、出路さんよろしいでしょうか?
出路
そうですね、【森】を作るにあたり原点に帰ろうと思っていました。
僕は25年前に服が好きで古着屋始めたのに、良くも悪くもいつの間にか流行を作るのではなく、出来上がった流行を売るお店になっているなと感じています。
流行を売ること自体は全然悪いこととは思っていないのですが、同時に古着のカルチャーを楽しんでいない自分たちにも気づきました。
そう気づいたので、自分たちがカルチャーを楽しんで、さらに若い子に自分たちの好きなカルチャーを伝えていくようなお店を作ろう!そう思って作っていったら、いろいろとっちらかったお店になりました(笑)
あと、できるだけ「古着屋さん」っぽくないスタイルにしたい。
普通の古着の合わせ方ではない「森らしいスタイリング」というのを提案したいと思っています。
さらに古着をリメイクしたり、リメイクのブランドをセレクトしたり、後には古着のシェアリングサービスなんかもスタートさせて新しい古着のスタイルを作っていきたいと思っています。
商品は新品も扱っているのですが、今洋服の供給過多や、安い労働力による生産などアパレル業界が抱える問題もあります。その中で扱う新品は未来の古着になるようなものを作りたいし、売れ残りもリメイクの材料や分解してパーツを使用したりしていきたいですね。そして生産が海外に移っていって国内の繊維産業が衰退している問題なんかもあります。なので、オリジナル商品はすべて国内生産で作っていきたいと思っています。
会長が【森】に込めた思いとビジョンを説明し、さらに【森】が目指す方向が具体的にわかってきました。
ここで時間がきたので、最後に登壇者からの一言づつで締めくくられます。
■締めくくり
井垣
そろそろ時間になりますので、皆さん最後に一言づつお願いいたします。
木村
僕は初めの方に話したように、「応援することにお金を使う」ような意識になると(気分が)気持ちいいので是非やっていただきたいです。
青木
2年前にFRUITSを止めたのですが、また原宿が面白くなってきているので、またやろうかな、、、
特に海外の観光客のファッションが面白いね!中国の人とかが勢いでブランドを着ていたりするので、面白い合わせになっているね!原宿で撮影することがSNS上ではファッションのステージになってきているので、今後また原宿が面白くなってきそうです。
高松
中崎町という場所にこの【森】ができて、今までにないファッションの提案型になってくれればいいと思っています。
岩崎
さっきも話したけど、「洋服の出口」を【森】を通して整理していきたいですね。
あと、仲間や友達のところで買うような、今までとは違うモチベーションで服を買うお店になっていったらいいなと思っています。
井垣
僕はこのお店がこの坪数で合理性が皆無なところがいいと思っています(笑)
それが新しく、今の時代から逆行している楽しさ。関わるヒトが、「人と違っていい」という価値観に変わっていくことを楽しみながらお店を作っていきたいですね!
本日は皆さんありがとうございました。
またこういった座談会を開いていきたいと思っています!
皆さん90年代からファッション業界に携わってきて、今までの流れ、そしてこれからをリアルに感じビジョンも見えているのだとすごく関心しました。
皆さん感じていることで共通していることですが、今「ファッション」そのものの価値観が大きく変わっていく過渡期にあるのだということです。
そんな新しい価値観を【森】を通してお客さんに提供していきたいと感じました。